秘湯ガイド:長い山道や登山道の先にある、日本の温泉
秘湯ガイド:長い山道や登山道の先にある、日本の温泉
秘湯とは「秘められた湯」、つまり人目につかない温泉のことです。長い山道や森の中の登山道を進んだ先、あるいは船で渡った先にあり、温泉街ではなく一軒宿であることも少なくありません。秘湯は、人里離れた場所を指す「秘境」の一部でもあり、秘境全般については秘境ガイド:日本の行きにくい場所と、その行き方で紹介しています。このガイドでは温泉に絞り、青森のランプの宿や、自分で湯船を掘る和歌山の川原など、13か所を取り上げます。
こうした温泉での入浴は、大きな温泉リゾートとは少し勝手が違います。出かける前に知っておきたいことがいくつかあります。
- 混浴はここでは珍しくなく、ルールは場所ごとに違います。法師温泉の大浴場は混浴で、湯浴み着は使えません。宝川温泉では湯着を貸し出しています。海辺の岩場にある地鉈温泉と川の中の川湯温泉では水着を着ます。祖谷温泉の川沿いの露天風呂は混浴ではなく、水着も着用できません。女性専用時間を設けている宿もあれば、湯浴み着についてのルールをまったく公表していない宿もあるので、フロントで尋ねてください。
- 日帰り入浴の時間は短めです。法師温泉の日帰り入浴の受付は11時から13時30分までです。午後の半ばに日帰り客の受付を終える所が多く、週に1日、日帰り客を受け付けない所もあります。
- 現金を持っていきましょう。奥鬼怒の日光澤温泉は現金のみで、乳頭温泉郷の湯めぐり用の券も現金でしか買えません。
- 季節を確認しましょう。玉川温泉は11月下旬から4月下旬まで休業し、高天原の山荘は7月から9月しか営業せず、青荷温泉への道は12月から3月まで一般車両が通れません。
- まず最終バスを調べましょう。祖谷温泉では最終バスが日帰り入浴の受付終了より1時間以上早く出て、法師温泉では町営バスの最終が15時33分です。時刻表は変わるので、出かける前に最新のものを確認してください。
公共交通で日帰りできる所もいくつかありますが、たいていは使える乗り継ぎが1つだけです。片道2日以上歩く所もあります。泊まれるなら泊まりましょう。
ひと目でわかる一覧
- 東北(青森県・秋田県):ランプの宿、7軒の宿が集まる温泉郷、pH1.2の源泉の湯治場
- 関東(栃木県・群馬県・式根島):歩いて行く宿、足元から湯が湧く湯殿、川沿いの大きな露天風呂、海辺の岩場の無料の湯
- 中部(富山県):日本一遠いと言われる、歩いて2日以上の温泉
- 紀伊半島(奈良県・和歌山県):修験者の宿場町、30分交代で貸し切る古い湯、自分で掘る川、日本三美人の湯のひとつ
- 四国:祖谷(徳島県):断崖をケーブルカーで下りた先の川沿いの湯
東北(青森県・秋田県)
青荷温泉(青森県黒石市)
青荷渓谷の底に建つ一軒宿で、1929年に開かれ、今も夜はランプの灯りで過ごします。客室に電灯はなく、テレビもなく、携帯電話の電波も届きません。風呂は4つあり、川沿いの岩造りの露天風呂は混浴で、女性専用時間があります。その時間は宿のページによって記載が異なり、湯浴み着のルールも公表されていないので、フロントで確認してください。日帰り入浴は10時から15時まで、1,000円です。12月から3月は宿へ下る道に一般車両が入れず、季節を問わず電話予約が必要な宿の送迎バスだけが交通手段になります。
乳頭温泉郷(秋田県仙北市)
田沢湖に近い山の中にある7軒の宿で、それぞれ自前の源泉を持っています。いちばん知られた鶴の湯は350年以上の歴史があり、ブナ林の中に乳白色の湯の混浴露天風呂があります。鉄道はなく、JR田沢湖駅から羽後交通のバスで約48分です。2026年4月1日改正の時刻表では、帰りの最終便は18時15分です。日帰り客は各宿のフロントで「湯めぐりマップ」(1,000円、現金のみ)を買えば、その日は宿どうしを結ぶ湯めぐり号に乗れます。入浴料は各宿で別に払います。冬は湯めぐり号がすべての宿までは行かず、黒湯温泉は休業します。
玉川温泉(秋田県仙北市)
観光地らしい温泉ではなく湯治場で、持病を抱えた人が1週間から1か月ほど滞在し、1日に何度も湯に浸かります。源泉「大噴」からは98℃、pH1.2の湯が湧き、宿によれば酸性度は日本一で、肌の小さな傷にもしみます。大浴場は男女別です。自然研究路沿いの地熱で温まった地面にゴザを敷いて横になる人もいますが、道具の貸し出しはないので持参してください。田沢湖駅からバスで43キロ、約75分上ります。日帰りなら9時30分のバスで行き(日帰り入浴は10時〜15時、最終受付14時30分、1,000円)、14時00分か15時55分のバスで戻ります。宿の営業は4月下旬から11月下旬までだけです。
関東(栃木県・群馬県・式根島)
奥鬼怒温泉郷(栃木県日光市)
日光国立公園内、鬼怒川の最上流にある4軒の宿で、いずれも女夫渕のゲートの先にあります。女夫渕から先はマイカーも一般のタクシーも入れません。森の遊歩道を歩いて、近い宿まで80〜90分、手白澤温泉までは2〜2.5時間。加仁湯か八丁の湯に泊まるなら宿の送迎車に乗れます。日光澤温泉は予約は電話のみ、支払いは現金のみで、露天風呂2か所は混浴です。日帰り入浴もでき(9時〜15時、700円、事前に電話を)、ただし女夫渕発の最終バスは15時25分です。
法師温泉 長寿館(群馬県みなかみ町)
三国峠のふもとにある木造の一軒宿です。1895年建築の湯殿「法師乃湯」は玉石を敷いた上に湯船が設けられ、約40℃の湯がそのすぐ下の岩盤から湧いてきます。足元から細かな泡が上がってくるのが見えます。混浴で、湯浴み着の着用やバスタオルを巻いての入浴はできず、宿泊客向けには20時から22時が女性専用です。日帰り入浴の受付は11時から13時30分、館内利用は14時までで、1,500円、水曜日と不定休の日は利用できないので、事前に電話で確認しましょう。猿ヶ京からの町営バスは上下各1日4便で、日帰りが成り立つのは行きの11時06分発と帰りの14時23分発の組み合わせだけです。
宝川温泉(群馬県みなかみ町)
露天風呂の広さで知られる温泉です。宝川の両岸に4つの露天風呂が並び、合わせて約470畳あります。いくつかは混浴で、湯着の貸し出しがあり、人目を気にせず入れる別の浴場もあります。水上駅からバスで約40分、宿泊客は無料送迎を利用できます。日帰り入浴は2,000円で、おおよそ10時から16時までです。
地鉈温泉(東京都新島村・式根島)
船でしか行けない式根島の南岸、細い谷を下りきった先にある岩場の湯です。鉄分を含む約80℃の源泉が岩から湧き出し、潮が満ちて冷やされるまではほとんどの湯だまりが熱すぎるので、満潮の前後1時間〜1時間30分を狙いましょう。24時間無料で、男女一緒に入り、水着の着用は必須です。脱衣所もシャワーもなく、約170段の階段を下るので、水着を着てから向かいましょう。島にタクシーはなく、荒天時は階段の入口が閉鎖されます。
中部(富山県)
高天原温泉(富山県・北アルプス)
黒部川源流域の標高約2,100メートル、沢沿いに露天風呂がいくつかある温泉で、日本一遠い温泉と呼ばれることもあります。車道は通じておらず、折立登山口から歩いて約13時間、途中には渡渉や滑りやすい岩場もあります。片道2日以上を見込み、山小屋泊の縦走経験を積んでから来てください。3つの露天風呂のうち1つは囲いのある女性用、ほかは混浴で、そのうち1つには脱衣所がまったくありません。水着や湯浴み着についての掲示は見当たらないので、山荘で確認してください。唯一の宿、高天原山荘は7月から9月だけの営業で、完全予約制です。
紀伊半島(奈良県・和歌山県)
ここで紹介する4か所は一軒宿ではなく小さな温泉地ですが、紀伊半島の多くの地域には鉄道がなく、バスも少なめです。
洞川温泉(奈良県天川村)
標高約820メートルに約20軒の木造旅館が並ぶ通りで、今も女人禁制の山、山上ヶ岳へ登る修験者が泊まる宿場です。温泉街と浴場は誰でも利用できます。温泉は控えめで、26℃の弱アルカリ性単純温泉です。村営の日帰り入浴施設、洞川温泉センターは11時から20時まで、水曜定休です。近鉄下市口駅からバスで約70分ですが、本数は上下とも1日6本ほどで、帰りの最終は夕方です。多くの人は1泊します。
湯の峰温泉(和歌山県田辺市)
熊野本宮大社から車で少しの狭い谷あいにある小さな温泉地で、熊野古道を歩く参詣者が参拝の前に湯垢離をした場所です。川の上の小屋にある、岩をくり抜いた湯「つぼ湯」は熊野の世界遺産の一部で、2〜3人ほどしか入れません。約30分の交代制で貸し切り(800円ほど)、受付は公衆浴場なので、混雑時は待つこともあります。JR紀伊田辺駅から本宮方面のバスに乗り、本宮付近で乗り換えます。本数が少ないので時刻表を確認してください。
川湯温泉(和歌山県田辺市)
大塔川の砂利の川底から湯が湧いているので、小さなスコップがあれば水際を掘って窪みをつくり、川の水を引き入れて好みの湯加減にできます。川の水が少なくなる12月から2月下旬には、川底の広い一帯をせき止めて「仙人風呂」がつくられます。大きな共同の露天風呂で、無料、夜はライトアップされます。川なので水着が必要で、石けんやシャンプーは使えません。湯の峰温泉や熊野本宮からも近く、最寄り駅は紀伊田辺駅で、そこからバスで向かいます。
龍神温泉(和歌山県田辺市)
旧龍神村の山あい、日高川沿いにある温泉地で、約1300年の歴史があるとされます。重曹泉で肌がなめらかになると言われ、群馬県と島根県の温泉とともに日本三美人の湯のひとつに数えられます。共同浴場「元湯」は源泉から直接引いており、日帰り客も入れます。JR紀伊田辺駅から「龍神温泉」バス停まで、バスで約1時間20分です。
四国:祖谷(徳島県)
祖谷温泉(徳島県三好市)
祖谷渓の断崖の上に建つ一軒宿「ホテル祖谷温泉」です。宿専用のケーブルカーで傾斜42度、高低差170メートルを下ると、川にせり出した露天風呂が2つあります。混浴ではなく、1日交代で男女が入れ替わります。水着は着用できず、タオルを湯船に入れることもできません。日帰り入浴はケーブルカー代込みで2,000円、7時30分から17時まで(受付は16時まで)で、水曜日は日帰り客を受け付けません。宿まで来るバスは1日3本だけで、最終は14時52分発と、日帰り入浴の受付終了よりかなり早く出ます。
出かける前に
帰りの最終バスや船を調べ、行く季節に営業しているかを確かめ、その日の入浴のルールを宿や現地で尋ねましょう。
温泉以外も含め、サイト内のすべての秘境は秘境ページでご覧ください。